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ブラッシングの重要さが骨身にしみた 
東洋経済新報社出版局次長  田上豊光さん

5年前、人間ドックに入ったとき、初めて歯槽膿漏といわれた。放っとくと、歯がみなポロポロ抜け落ちてしまうといわれた。実のところ毎日ではないが、朝、歯を磨くと出血していた。前歯は何ともなかったから、スイカを食べる時は何でもないが、リンゴをかじると血がでたりした。それに、痛みがまったくなかった。それだけにショックだった。それに、まだ50歳にもなっていない時だけにショックは大きかった。
それ以前に、会社の近くの歯医者に通っていたことがあった。ところが、もともと歯医者嫌いであった私は、治療のとき貧血をおこして倒れてしまった。それにこりて、金輪の際、歯の治療はやるまいと思った。そして10年ほどたって、先ほどの人間ドックに入ったのだった。

そんな時に、若林先生のことを雑誌「壮快」で知った。当時、中野に住んでいた私は、先生の医院が練馬にあって距離的に近いことがよかった。
先生にあってみたら、これまでとは違う型破りのお医者さんだった。それが言葉のはしはしにうかがわれた。即座に、すべてを先生におまかせしようと決心した。
一週一度の通院が始まった。何時間も待った挙句に治療は数分といった、これまでの経験とはまったく逆だった。恐怖とか不安とかがまったくない。それでいて治療は長い。時には診療台で眠ってしまうこともあったぐらいである。

そうした中で聞いた先生の言葉で、いまでも忘れられない言葉がある。「歯は人間の財産」という言葉だ。それについで、「自分の歯は自分で治すんだという自覚をもって、ブラッシングを励行しながら治療すれば、歯は抜かずにすむ」というのだった。ブラッシングで歯槽膿漏が本当に治るのかと、信じられなかった。

「歯を治すのは本人で、歯医者はお手伝いするだけだ」といいながら、先生は何とかして私がその気になるように話してくれた。しだいに私もその気になった。
何ヶ月間は、ひたすらブラッシングであった。何十年歯を磨いてきたが、いかに間違った磨き方をしてきたか思い知った。

ときどき点検があった。その点数をのばそうとして、また頑張った。
徐々に歯がしまってくるのが感じられた。歯ぐきの色も変わってきた。ある程度、きちんとなったところで本格的な治療が始まった。ぐらついていた歯は抜かずにすんだ。

先生の治療方法は、生きている歯をできるだけ生かそうというものだった。生かすためには時間もかかる。忍耐との戦いである。ブラッシングの励行がそのいい例である。
本格的に治療に移るまでのまだるっこいブラッシングの毎日。本当にこれで抜かずに治るのか、と疑ったり、酒をのんで帰った日など面倒くさく思えたりした。しかし、そんな時に先生の言葉を思いだした。「自分の歯は自分で治すんだ」それで奮い立って磨いた。

ブラッシングする時、私はラジオをかけることにした。一本一本正しく磨くとなると、10分や15分はすぐにたってしまう。それを苦に思わせないためにも、好きなラジオを聴く。
10分15分でなく2、3分でも磨いたあとは、舌の感触で歯垢がとれているのがわかってくる。それを15分やれば効果が上がるのは当たり前である。
家族の者たちの磨き時間をみると、せいぜい1分。20秒から30秒で終わる者もいる。いくらいっても、聞く耳をもたない。

先生のところに1年通って治療を終えたいまでは、出血もなければ歯も動いていない。私は救われたと思っている。
あとは定期検診をきちんとするだけである。半年に一度の定期検診を怠るまい、忘れまいとして、毎日のブラッシングに励んでいる。命より長い寿命をもっている歯の健康を保持していくために。

 
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