目白若林歯科

Periodontal disease

歯周病

What is

歯周病とは

 歯と歯ぐきの間から入ったバイ菌が、歯肉に炎症をひき起こし、さらに、歯肉の中にある歯槽骨(アゴの骨)を溶かしてしまう、これが歯周病(歯槽膿漏)という病気です。


  歯と歯ぐきの境目(歯周ポケット)に細菌が入り、歯肉が炎症を起こし赤く腫れて、歯磨きをすると血が出ます。でも、痛みは全くありません。さらに進行すると、歯肉の中にある歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けて、膿が出たり歯がグラグラしてきます。 この時期になると、やっと痛みや腫れをともないます。 そして、最後には歯が抜けてしまいます。

健康歯周組織
歯周病歯周組織
正常歯周組織
a 歯肉溝

 歯と歯ぐきの間 の「エナメル質」と「歯肉」の間には隙間がありこの隙間を「歯肉溝」といいます。「歯肉溝」の深い部分では「エナメル質」と「歯肉」が一部くっついています。
  健康な歯ぐきの場合、歯肉溝の深さは1~2mm、病気になっている場合は、4mm以上になります。

b 付着上皮

 歯肉溝の深い部分では「エナメル質」と「歯肉」が一部くっついています。ここを付着上皮といいます。

c エナメル質

 歯の表面はエナメル質で、ダイヤモンドぐらいの硬さがあり、身体の中で一番硬い組織です。象牙質を覆っている帽子のようなものです。

d 象牙質

 神経をカバーしてるのが象牙質で、歯の大部分をしめている組織です。象牙質が削れたり、虫歯で穴が開いたりすると、神経までの距離が近くなるためお水がしみたり、ブラシを当てると痛みが出たりします。

e セメント質

 根の周囲を囲んでいる非常に薄い硬い組織です。

f 歯根膜

 セメント質と歯槽骨を結んでいる線維で、咬んだ時の刺激を直接、骨に伝えないようにするためのクッションになったり、歯を骨に結びつける役割をしています。

g 歯槽骨

 歯槽骨は顎の骨の一部で歯はこの骨に支えられています。

歯周病は病気?

 歯周病とは、歯の周りの歯ぐき(歯肉)や、歯を支える骨などが破壊される病気です。歯周病の恐ろしい点は、重症にならないと痛みをあまり感じることがなく症状がどんどん進むことです。重症になって初めて痛みや腫れの症状が出てくる怖い病気です。

何で歯周病になるの?

 歯垢1mgのなかには、およそ2億の細菌がいて、温度と水分と栄養に富んだそのような環境の中で繁殖します。歯垢は、やがて唾液の成分とまざり歯石になります、歯石になると歯ブラシでは取れない頑丈な住み家になってますます繁殖していきます。
 この細菌こそが歯周病を引き起こす原因となります。

自然に治るの?

 治りません! でも歯周病は、予防でき治療も可能です。


  大切なのは正しいブラッシングを毎日すること、専門家により歯石を取り除き歯周菌の棲みやすい環境をなくすこと、歯科衛生士による専門的なクリーニングを定期的受けるようにしましょう。

Now

今の症状を知る

 気になるところがありませんか?


・ お口の中がネバネバしませんか?
・ 歯を磨いた時に血が出ませんか?
・ 口臭が気になりませんか?
・ 歯肉がむずむずしたり痛くありませんか?
・ 歯ぐきが赤く腫れたりしていませんか?
・ かたい物が噛みにくくなってませんか?
・ 歯ぐきが減ったような気がしませんか?
・ 歯がグラグラしている気がしませんか?


そんな気が・・・・というあなたは歯周病の検査を受けましょう。

歯周病の今の症状を知ることの大切さ

 歯周病は早期に発見し早期に治療することにより、いつまでも楽しい食生活を営めるようになりました。

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 多くの歯周病は、歯の根の囲りの骨が溶ける病気です。そして、溶けてしまった骨は、殆んど元に戻りません。さらに、多くの骨が溶けてしまうと、歯は機能を失ってしまい、口の中にとどめておくことができなくなってしまいます。
 尚、歯周病により骨が溶ける速度は、決して一定でありません。とくに、骨が早い速度で溶ける場合は注意が必要です。また、比較的若年層に早い速度で骨を失う歯周病のタイプがあります。そして、骨の溶ける量が増すと、治療が大変むずかしくなります。

 そこで、いま歯の根の囲りで起こっている病的な変化は、歯肉と歯に症状としてあらわれますので以下に説明します。是非参考にして下さい。

1.歯肉の腫れ

 歯肉の腫れには、全体的に赤く腫れ歯をみがくときに出血する場合と、一本の歯の囲りだけプクンと腫れるときがあります。 とくに、注意が必要なのは、後者のプクンと腫れる症状のときです。骨が溶ける直接の原因は、歯垢・歯石などの細菌です。この細菌が歯と歯肉の境目から歯の根の先の方に向かって侵入し、骨を溶かしながら歯肉が腫れるわけです。このような症状があらわれたときは、骨が急速に溶けている最中です。この歯肉の腫れが度々繰り返すことで殆どの骨が失われてしまいます。また、腫れは一夜にしてあらわれ、そして痛みを伴います。

 

 ということは、早い時期に歯垢・歯石を完全に取り除くことが必須であり、またこのような症状は、早期に治療することで、骨の再生が期待できます。このような症状は、すぐ治療することで元にもどります。

2.若年者の歯周病の特徴

 若年者にみられる歯周病で、とくに数か所の歯の根の囲りの骨が溶ける特種なタイプがあります。私の臨床経験からすると、20歳前後から30歳中頃にあらわれ、そして骨が溶けている数ヶ所以外の歯は殆ど正常、もしくは軽度です。

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 とくに、注目したいのは、数ヶ所の骨が急速に溶けてしまうことです。そして、多くの骨を失うと元にもどすことは困難です。骨が溶ける歯は第一大臼歯と前歯、とくに中切歯です。また第二小臼歯にもあらわれることがあります。

  症状は歯肉が腫れたり、歯肉が収縮したり、歯肉の色が変わったり、歯みがきのときに出血したり、或いは噛んだとき頼りがないように感じたり、口臭があったり、さらに歯肉を指で押すと血やうみが出たり、そして多くの骨が溶けると歯が動くなど、様々な変化が起こります。
 このような症状は若年者にみられる特種な歯周病と考えられますので、早い時期に歯周病専門医で検査されることをすすめます。

  比較的若年層の方は、今後歯の必要な時期が長いということを考えてみましょう。

3.中・高齢者の歯周病

 中・高齢者の歯周病は、若年者と比べ病状の進行は比較的ゆっくり進みます。そして、歯周病の初発時期は、若い年齢層から高年齢層まで年代に関係なく発症します。このタイプの歯周病は殆んど痛みや不快などの症状がないまま進行します。そして、重症になり、何らかの症状が認められ、はじめて歯周病に罹ったことに気づくようです。

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そして、とくに大事なことは、重症になる前、即ち治療の効果が期待できる時期に気づくことです。 その理由は、このタイプの歯周病はかなり進んだ病状であっても適切な治療を行うことで、好ましい治療結果が得られ易く、そして望ましい管理を行うことで良好な予後が期待できるからです。

  歯周病が中度から重症になると歯の根の囲りの骨がかなり溶けてしまいます。そのため、歯が動くようになったり或は歯の位置が変わってしまい、しいては上下の歯の噛み合わせの不調和を来たしてしまいます。そして、このかみ合わせの不調和は、歯の根の囲りの骨を溶かす原因の一つとなります。

  歯周病により骨が溶ける殆どの原因は歯垢、歯石などの細菌であり、これを炎症性因子といいます。さらに噛み合わせの不調和も骨を溶かす因子であり、これを外傷性因子といいます。この炎症性因子と外傷性因子が共同で加担すると、骨の溶ける速度が早まります。即ちこのような状況を放置すると歯周病は急速に重症へと進んでしまいます。 このように、ゆっくり骨が溶ける歯周病のタイプであっても、出来る限り早い時期に察知し、そして治療することにより、望ましい治療結果が得られることは言うまでもありません。そして、

 適切な対応策を講じることで比較的良好な治療結果が得られ易く、さらに適切な管理を行うことで良好な予後が期待できます。

歯周病の治療に対する私の信念

 歯周病治療とは、歯科学の一分野であり、とくにお口全体を一つの器官として扱う歯科学です。即ち、一本の歯を単位として治療の成否を決定するのではなく、お口を一単位の複合体として健康を確立し、そして長期にわたり健康を維持できるか否かで治療の良否が決まるわけです。
  例えば、重症の歯が一本ないし数本存在し、どうしても抜かなければならないような場合に、もし一本ないし数本抜いたとしても、残っている歯を基礎に噛む機能を再構築し、そして長い間楽しい食生活が営みつづけられたとしたら、その時点で一本ないし数本抜いたことに意味があると考えています。
 いわゆる歯周病治療の成功とは、治療後お口をしっかり管理することで長期にわたり健康な状態を維持されたとしたら、その時点で評価されるものであるという信念をもっています。

4.歯の動き

  歯の動きを調べるには、歯を親指と人指し指ではさんで動かしてみると解ります。もし、少しでも動くようであれば、骨が溶けだしているわけです。僅かでも動くようであれば歯周病は中等度と思われます。
  歯周病は軽度から中等度であれば比較的簡単な治療で治ります。歯の動きは少ないうちに治療することが歯の長期間の健康維持につながり、また動きが強い場合でも溶けた骨の形により治ります。

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 歯の根の囲りの骨が少しづつ溶け、年月、或いは日の経過とともに、とどまることなく溶けつづけます。そして歯を支えられなくなるころには、食物が噛みづらくなり、いずれは自然に抜け落ちるか、または抜かなければならなくなってしまいます。また、歯の動きは、はじめは横に動くようになり、次に歯の根の先に向かって縦に動くようになると重症といえます。

System

診療システム

医療面接 (問診)

 治療の目的は、最適な健康を獲得することです。そのためには、その病気を治すための適切な治療法を考案することが最も大切なことです。
  適切な治療法を導き出すためには、現在の病状とその経過を調べ、さらに治療に対する患者さんの希望や患者さんの環境などの背景を知る必要があります。

 

  それは治療に入る前に十分時間を頂き、患者さんの関心に沿って情報を収集します。尚、治療内容、治療経過、そして治療結果(治療後の治った状態)、さらに治療後の長期にわたる健康の維持(予後経過)などについて十分認識を頂き、そして治療上の意志決定に患者さん自ら参画して頂けるように、知識を提供いたします。このようなことを医療面接(問診)といい、治療のスタートラインに立つうえで極めて重要なことです。

痛みや不快などの問題がある場合
痛みや不快などの問題がない場合
痛みや不快などの問題がある場合
痛みや不快などの問題がない場合
緊急処置

 歯の痛みや腫れなどの症状のあるときは、その原因を早急に調べ、速やかに症状を取り除きます。また、歯が折れた、つめ物が取れた、冠が外れたなどという場合には、その場で仮歯を作ったり、つめなおしたり、元のようにします。入れ歯の具合が悪い、義歯がこわれた、などという場合はその場で調整・修理いたします。

医療面接 (問診)

 はじめに、視診・触診を行います、初診時に記入していただいた問診表をもとに、気になったところをチェックします。
  レントゲンは、お口の中を上下14箇所に分けて撮影します、口腔内の写真も(これは後でスライドにしてお見せします)15枚程度撮ります。
  歯型を上下採ります、これは咬み合わせや歯並びを診ます。
  歯周病の診査も行います、プロービングといって歯周ポケットの深さを測ります、また、歯の動揺度、歯垢、歯石の付着の状態も診査します。

 

 緊急処置を終えられた方にも、ご希望があれば(ほとんどの方が行っていらっしゃいます)詳しい診査を行っています。
 症状が出た(緊急処置を必要とした)ということは、何らかの原因があるはずです。その部位にとどまらず、お口の中全体の診査が必要です。

 診断は、「疾患とヒトの履歴書を作成することである」その目的は、症例の将来(予後)を占う(予測)ことである。   By若林勝夫
  充分に詳しく診査した資料をもとに、診断します。レントゲンからは、目で見えない部分がはっきりしてきます。歯の状態、骨(歯槽骨)の状態、病巣の状態までわかります。歯型からは、咬み合わせや、干渉(自分では知らないうちに避けている)などがわかります。

 

  歯周ポケットは、歯周病を診断する上でもっとも重要な資料です、これをもとに、正常、軽度、中度、重度の度合いがわかります。
  これらを総合的に判断し、治療計画を立てていきます。

 診査・診断の結果をもとにして担当医より、お話をさせていただきます。
  症状、原因、治療方法、治療期間、費用にいたるまで、細かくスライド写真や今回作製した患者さんの歯の模型などを使い説明します。
  最適な治療計画と予防計画を定め、それを患者さんが理解をしていただき、納得していただいたうえで治療が始まります。

  -豊かな人生を送るために-
  私たちは、「予防」のために努力して「いつまでも、おいしい物を自分の歯で噛めること」を願っています。それは、ただ歯がある、ないという問題でなく、自分の歯がそろっていることが、人生を積極的に生き、歳を取っても生活の質が高く保たれることにつながるからです。
  歯ブラシ1本から始めましょう。正しいブラッシングが一番の予防につながります。衛生士からブラッシングをマスターしましょう。
  歯垢・歯石を取ることも大事です。衛生士は、クリーニングのプロフェッショナル。お口の中の歯垢・歯石を取り除き、綺麗でツルツルな歯で気持ちよさを実感してください。歯ぐきも引き締まり、健康なピンク色になります。
  この状態を持続させることがブラッシングであり、予防の基本です。

 治療計画で説明したように、計画的に治療をすすめていきます。
 歯周治療、修復治療、補綴治療等、経験だけでなく科学的に裏づけされた治療法の提案をいたします。

 全ての歯周疾患を治療するにあたり最も大切なことは、治療が終了してから長期間にわたり、充実した楽しい食生活を送ることが出来るかどうかということです。そのため、治療終了後3ヶ月~4ヶ月毎に定期検診に来院して頂いています。

 当医院では、30年来定期検診に通院されている患者さんで一度も歯を削ったり、歯肉の手術をすることなく過ごしていらっしゃる患者さんが多くいらっしゃいます。心がけ次第で、一生自分の歯で食べることができます。「口の中に生えてきたすべての歯は他の臓器とともに生涯機能し続けるものだという頑強な意志を持つべきであり、そのための惜しみない努力により健康な人生を自ら勝ち取って頂きたい…」これが私たち目白若林歯科歯周病専門医院院長及びスタッフの切なる願いです。

Type

歯周病の種類

インプラント治療の手順

1. 歯肉炎

 歯肉辺縁部の歯根に付着した歯垢、歯石により、歯肉に炎症が引き起こされた状態を歯肉炎といいます。歯肉炎は、歯を支えている骨には炎症は波及されていないので、骨の変化はありません。

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しかし、過去に骨の吸収が起こったが、治療することにより現在は治癒している状態で歯肉のみに炎症が起こっている場合も歯肉炎に属します。

   どちらの場合も、放置すると歯肉炎から歯周炎(骨の吸収が起こった状態)に移行することが多くみられます。それ故、歯肉炎の段階で治療すれば、比較的短期間で治癒し、治った後の歯と歯肉の関係も殆んど変わらないので、治癒した形態も理想的といえます。
   歯肉炎は、他に妊娠中に発生する妊娠性歯肉炎、或は高血圧治療、てんかん治療の薬剤の服用による薬物性の歯肉炎などがあります。

2. 慢性歯周炎

 慢性歯周炎は、広い年齢層(小児から成人に至る)にみられる炎症性の歯周炎で、成人に最も多い頻度で発症し、その進行の程度は比較的ゆっくり波及するタイプです。

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感染部位(病態の広がり)は全体の歯の30%以下に存在しているものを限局型慢性歯周炎といい、それが30%を超える場合を広汎型慢性歯周炎といいます。
   慢性歯周炎は、歯垢、歯石などの細菌により感染し発症します。さらに細菌の量と歯周炎の進行の程度は比例することが多いです。それ故、歯周炎の種類(タイプ)を判定する基準として参考にしています。

  次に、痛み、不快などの症状ですが、軽度から中等度に進行しても殆んど症状はなく、重度になると突然歯肉が腫れたり、歯が大きく動いたり、歯ブラシによる出血があったり、或は噛むとき痛みを感じるなど、様々な症状が出てきます。このような場合、とくに重症な症状は歯の縦(歯根と歯冠方向)の動揺です。
   この種の歯周炎は、通常ゆっくりと進行します。しかし、歯肉の突然の腫れ、例えば痛みを感じてから数時間後に腫れるような場合は、急速に骨の吸収が起こります。このような場合は、性急に処置が必要となります。この種の病態を急性歯周膿瘍といいます。この場合、切開して排膿させることや抗生物質の投薬などの対称療法は好ましい対処ではありません。この腫れの原因は細菌ですので、徹底的に細菌を除去することが適切な処置法です。

3. 限局型侵襲性歯周炎

 思春期前後から30才頃までに発症することが多く、その特徴は第一大臼歯と前歯に限局した中等度以上の骨の崩壊が認められ、そのうち1本は必ず第一大臼歯であり、その他の歯は第一大臼歯、或は前歯であったりします。さらに、それ以外に2本の歯が骨の崩壊が認められることもあります。

4. 広汎型侵襲性歯周炎

 通常は30才以下の年令に発症することが多いが、30才過ぎても認められることがあり、その特徴は第一大臼歯と前歯に散発的に現われますが、その他の部位でも少なくても3本の歯、或はそれ以上の歯に認められます。

歯周炎の進行過程

健康な歯肉
歯肉炎
軽度歯周炎
中等度歯周炎
重度歯周炎

Routine

歯周治療の流れ

 歯周病の治療に限らず全ての歯科治療は初診時に患者さんの痛み、不快症状、希望などを詳しく知るための、いわゆる医療面接(問診)を行います。痛みや不快症状に対しては、速やかに処置を行います。
 それに続いて、歯周病の病態についての詳細な診査、いわゆる精密検査を行います。

1.医療面接(問診)

 痛み、不快感、そして患者さんの希望などを伺います。それは、治療法とその内容を考案し患者さんに詳しく説明するためです。但し、緊急に処置が必要な場合は、来院時に直ちに治療に入ります。

 治療の目的は、最適な健康を獲得することです。そのためには、その病気を治すための適切な治療法を考案することが最も大切なことです。
  適切な治療法を導き出すためには、現在の病状とその経過を調べ、さらに治療に対する患者さんの希望や患者さんの環境などの背景を知る必要があります。

 それは治療に入る前に十分時間を頂き、患者さんの関心に沿って情報を収集します。尚、治療内容、治療経過、そして治療結果(治療後の治った状態)、さらに治療後の長期にわたる健康の維持(予後経過)などについて十分認識を頂き、そして治療上の意志決定に患者さん自ら参画して頂けるように知識を提供いたします。
 このようなことを医療面接といい、治療のスタートラインに立つうえで極めて重要なことです。尚、以前は、医療面接を問診と呼んでいました。

2.精密検査

  • 口腔粘膜、舌、口唇などの診査
  • 歯及び処置歯、未処置歯の診査
  • 歯肉の炎症の有無
  • 歯垢、歯石の付着の状態
  • 歯の動揺度の診査
  • レントゲン写真の撮影
  • 咬みあわせの診査
  • 顎関節の診査
  • 口腔内写真(必要に応じて)

治療の流れ

 歯周病治療は、初期治療歯周外科治療修復補綴治療、そして保全治療の4つの段階から成っています。

1. 初期治療

 初期治療とは、歯周病の原因を取り除き可能な限り清潔なお口の環境をつくる処置です。


 歯周病の主な原因は、歯垢、歯石などの細菌です。
 ということは、歯垢、歯石を取り除き、そして再び付着しないように適切な歯のみがき方を指導することが初期治療の重要な役割です。

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 しかし、むし歯の穴、歯の斜き、歯の位置異常、そして歯の強い動揺などにより、歯垢、歯石が除去できない場合、それらを整備し、初期治療を十分果たせるような環境づくりも重要な役割です。
  これらの処置が終了し、続いて病変がどのように改善されたか或は次の処置が必要かどうかを診査します。それを再評価と言います。これらの一連の処置を初期治療といい、歯周病治療のスタートであり、必ず通らなければならない治療です。

 

 1)カウンセリング
  歯周病、むし歯、その他の口腔疾患、そしてその疾患に対する治療内容、治療期間、治療結果(治療後の状態)治療費用などについて詳しく説明します。
  これは患者さんにとっても術者にとっても極めて重要なことですので十分時間を頂きご理解頂けるよう説明します。
 そして治療の契約を頂き治療開始準備に入ります。

 

 2)ブラッシング指導
  炎症性の歯周病の症状は、歯肉の炎症、歯肉の部分的な腫れ、歯周ポケット、骨の吸収、歯の動揺、そして口臭などです。それらの症状の原因は殆んど歯垢、歯石などの細菌です。即ち歯周病は細菌に起因した疾患であるため感染症といいます。ということは、歯垢、歯石などの細菌を取り除くことが歯周病という感染症の治療の根本であり、同時に治療のスタートといえます。そして、歯垢は軟らかく歯ブラシなどの清掃器具で取りの除くことが出来るが、歯石は非常に硬いので術者(歯科医師、又は歯科衛生士)が取り除きます。

 歯垢を歯ブラシなどの清掃器具を使いきれいにすることで、とくに歯肉の炎症はいちぢるしく改善されます。それに続いて、歯根に付着した硬い歯石を術者が取り除きます。さらに、歯肉の炎症は改善されます。
  効果的な歯ブラシ法をマスターすることが、歯周病治療の成功のための絶対的な条件であることをつけ加えます。

 

 3)スケーリング、ルートプレーニング(SRP)
  スケーリングとは歯根に付着した歯石を取り除くことであり、ルートプレーニングとは歯石を取り除いた歯根の面を平滑(ツルツル面)にする処置です。歯周病の多くは歯周ポケットが存在しているため、歯石は歯肉の上部(肉眼でみえる)と歯周ポケットの中(肉眼で確認できない)に分かれます。
  このように歯周ポケットが認められる場合は、まず歯肉の上部の歯石を取り除き、そして一定の期間をおいて、歯周ポケットの中の歯石を取り除きます。同時に歯根面を平滑にする目的でルートプレーニングを行います。

 深い歯周ポケットに対してスケーリング、ルートプレーニングを行う場合、痛みが伴うことがあります。その場合、麻酔を使うことでまったく痛みがなく、また、麻酔も無痛麻酔法を実践していますので痛みは伴いません。尚、深い歯周ポケットは、肉眼では確認できないため、とくに高度な技術が必要となります。この処置により、当院の歯周病の全体の約80%は治っています。勿論、この時間も正しい歯磨きが施されていることが条件です。尚、歯磨き指導、スケーリング、ルートプレーニングを一括して歯周基本治療と呼んでいます。

 

 4)適切な歯みがきを阻害する環境の整備
  初期治療で記述したように、歯磨きの効果を期待するために、お口の環境を整えることが必要です。むし歯、充填物(つめもの)、冠(かぶせもの)の不適合、歯の傾斜、歯の位置異常、そして強い歯の動揺などが原因で適切な歯みがきやスケーリング、ルートプレーニングの効果が阻害されます。
  尚、噛み合わせの不調和なども調整することで歯周病の原因を取り除きます。これらのお口の環境整備の大きな目的は、歯みがき、スケーリング、ルートプレーニングの効果を最大限に高めることであり、歯周病治療における大切な分野でおることを強調します。

 

 5)再評価
  ブラッシング、スケーリング、ルートプレーニング、環境整備などを行ったことで、お口の中がどのような変化が起こったかを評価します。もし治癒していれば歯周治療は終了し、長期的な健康維持のための定期検診に移行します。しかし、改善しているが治癒が得られていない場合は、次に必要な処置を考案することになります。それは歯周外科治療であったり、或は冠、ブリッジ、入れ歯などの修復補綴治療などです。

2.歯周外科治療

 再評価の結果、歯周病の病変が残存している場合に、必要に応じて歯周外科治療を行います。歯周外科治療は歯肉に対する処置と歯肉と骨に対する処置があります。

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 1)歯肉整形切除術
  歯肉が肥大し盛り上がっている場合、歯周病の進行或は審美的問題があります。このような場合、歯肉を切除し、形態を整えることにより食べカスや歯垢の付着を予防します。比較的簡単な処置のため短時間で終了します。

 

 2)フラップ手術
  フラップ手術はブラッシング指導、スケーリング、ルートプレーニングなどの、いわゆる歯周基本治療を行った後、再評価により歯周病変、例えば歯周ポケットが残っている場合にフラップ手術を行います。とくに、歯周ポケットが深く、或は歯根の形態が複雑なため歯周基本治療のみでは歯石を取りきれないことがあります。このような場合、歯肉を開いて肉眼で直視しながら歯石を完全に取り除きます。さらに、吸収された骨の形態に異常がみられる場合、歯肉を開いて直視下で骨の形態を整えます。このような歯周病変は歯肉も細菌感染しているので、フラップ手術時に感染組織(不良肉芽組織)を除去します。
  フラップ手術は、歯肉を開き肉眼で直視するため歯石(細菌)、感染組織を完全に取り除き、かつ異常骨形態も修整できるという利点があります。尚、手術に要する時間は約1時間程度です。勿論、痛みは一切ありません。

 

 3)歯肉移動術、歯肉移植術
  歯肉の退縮による歯根面の露出、経年的に歯肉の退縮がみられる場合、隣接部の歯肉を移動する手術を歯肉移動術といい、上あごの抵抗力のある厚い歯肉を移植する手術も歯肉移植術といいます。尚、すでに歯を失っている部位が著しくくぼんでいる場合、上あごの歯肉を移植し歯肉の形態を正常に戻す手術(歯槽堤増大術)も歯肉移植術に含みます。これらの手術は将来の歯の健康維持を目的とした予防処置と考えられます。

 

 4)再生療法
  比較的軽い歯周病であれば、歯の周囲を清潔にすることで治ります。しかし、炎症が歯根の先端の方まで侵入すると歯根の周りの骨に破壊が起こります。そして、再生療法を必要とする歯周病の多くは、歯根の周りの骨が垂直的に吸収された状態です。その治療の目的は、吸収された骨を再生させることです。その手術の際に歯周組織再生誘導材料を手術補助の目的で使います。

 

エムドゲインゲル
  失われた骨、線維、セメント質などの歯周組織の再生を目的として、吸収した骨の内側(歯根の周囲)にエムドゲインを注入する処置です。1999年5月、私の所属する日本臨床歯周病学会学術大会において、エムドゲインの成果について学会を行い、多くの成功例が報告され、現在の歯周病治療の選択肢としてのエムドゲイン法の真価を決定づけました。日本において、エムドゲイン法を採用し、15年経過していますが、これからの治療経過をしっかり観察したいと考えています。

 

歯周組織再生誘導方(GTR法:テトロン製膜使用処置)
  歯根の周囲の骨の吸収した部位に骨の再生を促すために、テトロン製の薄い膜を使います。歯根の周りに穴が開いているような骨の吸収部位を膜でふたをして、膜の内側に骨の再生を期待します。使用する膜は吸収性膜と非吸収性膜がありますが、歯周病の病態を考慮して選択します。

3.修復補綴治療

 修復補綴治療は、通常の食生活の営みと適切な噛みあわせの機能を改善するために、仮の冠、ブリッジ、或は仮の入れ歯をある一定の期間使用します。それに続いて、最終的な冠、ブリッジ、そして入れ歯などを装着し、治療が終了します。これらの一連の治療を修復補綴治療といいます。

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  初期治療、歯周外科治療、そして修復補綴治療を経て歯周病治療が終了し、それに続いて健康の維持と増進をはかるための保全療法(メインテナンス治療)に移行します。

3.修復補綴治療

 全ての歯周治療が終了し、長期的な健康維持のための治療を保全治療といいます。そのためには、3-4ヶ月毎の定期検診に来院して頂きますが、その都度、歯のみがき法をチェックしたり、新たに付着した歯石を取り除きます。

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同時に、歯周病、むし歯の再発、或は噛みあわせの不調和など何らかの問題の派生について詳しく診査し、必要があれば直ちに解決策を計画し、実践します。
  保全療法の最大の指標は、充実した楽しい食生活の永続的な営みでしょう。そして豊かな人生を過ごすうえでの基盤になればと願っています。.

レントゲン

レントゲン撮影は安全です

 歯科用レントゲン検診の放射能が人体に及ぼす影響について、まだまだ誤解されている部分が多いようです。


 歯のレントゲン撮影の放射能の量は、人間が1日24時間、他の惑星からの宇宙線や放射性の粉塵など、自然環境の中で受ける(自然被爆)放射能の総量にほぼ等しい位の量です。


 また、生殖器官に及ぼす影響を気にかけている人もいらっしゃいますが、生殖器官に害を及ぼすためには、1度に2000枚以上、レントゲンを撮らなければならないことが証明されています。

レントゲン検査は、歯周病に欠かせない検査です

 炎症、過剰歯、嚢胞(うみがたまること)、腫瘍、骨の病気、埋伏歯、異常な個所にできた虫歯などを発見するために行いますが、これらはほんの一部で、隠れた病状を的確に把握するために多大な役割を果たしているのです。
 レントゲンの安全性ついてご理解いただけるよう、お願いいたします。