歯周病の治療に限らず全ての歯科治療は初診時に患者さんの痛み、不快症状、希望などを詳しく知るための、いわゆる医療面接(問診)を行います。痛みや不快症状に対しては、速やかに処置を行います。
それに続いて、歯周病の病態についての詳細な診査、いわゆる精密検査を行います。
全ての歯周疾患を治療するにあたり最も大切なことは、治療が終了してから長期間にわたり、充実した楽しい食生活を送ることが出来るかどうかということです。
そのため、治療終了後2~3か月毎に定期検診に来院して頂いております。
治療の目的は、最適な健康を獲得することです。そのためには、その病気を治すための適切な治療法を考案することが最も大切なことです。
適切な治療法を導き出すためには、現在の病状とその経過を調べ、さらに治療に対する患者さんの希望や患者さんの環境などの背景を知る必要があります。
それは治療に入る前に十分時間を頂き、患者さんの関心に沿って情報を収集します。尚、治療内容、治療経過、そして治療結果(治療後の治った状態)、さらに治療後の長期にわたる健康の維持(予後経過)などについて十分認識を頂き、そして治療上の意志決定に患者さん自ら参画して頂けるように知識を提供いたします。
このようなことを医療面接といい、治療のスタートラインに立つうえで極めて重要なことです。尚、以前は、医療面接を問診と呼んでいました。
歯周病治療は、初期治療、歯周外科治療、修復補綴治療、そして保全治療の4つの段階から成っています。
初期治療とは、歯周病の原因を取り除き可能な限り清潔なお口の環境をつくる処置です。
歯周病の主な原因は、歯垢、歯石などの細菌です。
ということは、歯垢、歯石を取り除き、そして再び付着しないように適切な歯のみがき方を指導することが初期治療の重要な役割です。
しかし、むし歯の穴、歯の斜き、歯の位置異常、そして歯の強い動揺などにより、歯垢、歯石が除去できない場合、それらを整備し、初期治療を十分果たせるような環境づくりも重要な役割です。
これらの処置が終了し、続いて病変がどのように改善されたか或は次の処置が必要かどうかを診査します。それを再評価と言います。これらの一連の処置を初期治療といい、歯周病治療のスタートであり、必ず通らなければならない治療です。
1)カウンセリング
歯周病、むし歯、その他の口腔疾患、そしてその疾患に対する治療内容、治療期間、治療結果(治療後の状態)治療費用などについて詳しく説明します。
これは患者さんにとっても術者にとっても極めて重要なことですので十分時間を頂きご理解頂けるよう説明します。
そして治療の契約を頂き治療開始準備に入ります。
2)ブラッシング指導
炎症性の歯周病の症状は、歯肉の炎症、歯肉の部分的な腫れ、歯周ポケット、骨の吸収、歯の動揺、そして口臭などです。それらの症状の原因は殆んど歯垢、歯石などの細菌です。即ち歯周病は細菌に起因した疾患であるため感染症といいます。ということは、歯垢、歯石などの細菌を取り除くことが歯周病という感染症の治療の根本であり、同時に治療のスタートといえます。そして、歯垢は軟らかく歯ブラシなどの清掃器具で取りの除くことが出来るが、歯石は非常に硬いので術者(歯科医師、又は歯科衛生士)が取り除きます。
歯垢を歯ブラシなどの清掃器具を使いきれいにすることで、とくに歯肉の炎症はいちぢるしく改善されます。それに続いて、歯根に付着した硬い歯石を術者が取り除きます。さらに、歯肉の炎症は改善されます。
効果的な歯ブラシ法をマスターすることが、歯周病治療の成功のための絶対的な条件であることをつけ加えます。
3)スケーリング、ルートプレーニング(SRP)
スケーリングとは歯根に付着した歯石を取り除くことであり、ルートプレーニングとは歯石を取り除いた歯根の面を平滑(ツルツル面)にする処置です。歯周病の多くは歯周ポケットが存在しているため、歯石は歯肉の上部(肉眼でみえる)と歯周ポケットの中(肉眼で確認できない)に分かれます。
このように歯周ポケットが認められる場合は、まず歯肉の上部の歯石を取り除き、そして一定の期間をおいて、歯周ポケットの中の歯石を取り除きます。同時に歯根面を平滑にする目的でルートプレーニングを行います。
深い歯周ポケットに対してスケーリング、ルートプレーニングを行う場合、痛みが伴うことがあります。その場合、麻酔を使うことでまったく痛みがなく、また、麻酔も無痛麻酔法を実践していますので痛みは伴いません。尚、深い歯周ポケットは、肉眼では確認できないため、とくに高度な技術が必要となります。この処置により、当院の歯周病の全体の約80%は治っています。勿論、この時間も正しい歯磨きが施されていることが条件です。尚、歯磨き指導、スケーリング、ルートプレーニングを一括して歯周基本治療と呼んでいます。
4)適切な歯みがきを阻害する環境の整備
初期治療で記述したように、歯磨きの効果を期待するために、お口の環境を整えることが必要です。むし歯、充填物(つめもの)、冠(かぶせもの)の不適合、歯の傾斜、歯の位置異常、そして強い歯の動揺などが原因で適切な歯みがきやスケーリング、ルートプレーニングの効果が阻害されます。
尚、噛み合わせの不調和なども調整することで歯周病の原因を取り除きます。これらのお口の環境整備の大きな目的は、歯みがき、スケーリング、ルートプレーニングの効果を最大限に高めることであり、歯周病治療における大切な分野でおることを強調します。
5)再評価
ブラッシング、スケーリング、ルートプレーニング、環境整備などを行ったことで、お口の中がどのような変化が起こったかを評価します。もし治癒していれば歯周治療は終了し、長期的な健康維持のための定期検診に移行します。しかし、改善しているが治癒が得られていない場合は、次に必要な処置を考案することになります。それは歯周外科治療であったり、或は冠、ブリッジ、入れ歯などの修復補綴治療などです。
修復補綴治療は、通常の食生活の営みと適切な噛みあわせの機能を改善するために、仮の冠、ブリッジ、或は仮の入れ歯をある一定の期間使用します。それに続いて、最終的な冠、ブリッジ、そして入れ歯などを装着し、治療が終了します。これらの一連の治療を修復補綴治療といいます。
初期治療、歯周外科治療、そして修復補綴治療を経て歯周病治療が終了し、それに続いて健康の維持と増進をはかるための保全療法(メインテナンス治療)に移行します。
全ての歯周治療が終了し、長期的な健康維持のための治療を保全治療といいます。そのためには、3-4ヶ月毎の定期検診に来院して頂きますが、その都度、歯のみがき法をチェックしたり、新たに付着した歯石を取り除きます。同時に、歯周病、むし歯の再発、或は噛みあわせの不調和など何らかの問題の派生について詳しく診査し、必要があれば直ちに解決策を計画し、実践します。
保全療法の最大の指標は、充実した楽しい食生活の永続的な営みでしょう。そして豊かな人生を過ごすうえでの基盤になればと願っています。